第25回公開憲法フォーラム レポート

結語

各党代表挨拶につづき、主催団体 美しい日本の憲法をつくる国民の会共同代表の田久保 忠衛氏より結語が述べられた。

美しい日本の憲法をつくる国民の会共同代表 田久保 忠衛 氏

皇室を中心にした平和国家としてのアイデンティティーを世界に打ち出せ

田久保氏は、この14年間で大きな進展が2つあったとし、一つは宮中に関する幾つかの行事で、国民にとって皇室というのは何かということが胸に刺さったと述べた。もう一つは安倍政権の意義で、国防で大きくカーブを切ったとした。しかし、国際問題では、今のアメリカは相対的な力が明らかに衰退していると指摘。最近の例では、イランとサウジアラビアは中国の仲介によって国交正常化の合意を挙げ、アメリカは初めて直接軍事介入しなかったことに驚いたと述べた。

また、プーチンの核の恫喝に対して、アメリカは何もしていないと指摘。これにより、韓国と日本には拡大抑止力、つまり核の傘の不安が生じていると述べた。アメリカは韓国が自ら核を持つことを望んでおり、これは朝鮮半島に不安が漂い始めたことを意味しているとし、アメリカは自分の犠牲を覚悟で韓国や日本を守るか不安があるとした。田久保氏は今の国際情勢がアメリカの衰退がどこまで始まっていくか、アメリカが日本と韓国に安心しろと拡大抑止力の修正版を示せるかどうか、日本は新しい局面を開く必要があるとし、日本の国を開く最大のチャンスはやってきたと述べた。それは、アメリカの助けを借りつつ、日本を大きく国の形を変えていくことであると述べた。日本は皇室を中心にしてきた平和国家であり、これを全面的に日本のアイデンティティーとして世界に打ち出す必要があると述べた。

田久保 忠衛(たくぼ ただえ) 氏 プロフィール

昭和8年千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、時事通信社に入社。ハンブルグ特派員、那覇支局長、ワシントン支局長、外信部長などを務める。平成4年から杏林大学で教鞭を執る。法学博士。現在、杏林大学名誉教授。専門は国際政治。国家基本問題研究所副理事長。美しい日本の憲法をつくる国民の会共同代表。平成27年4月、日本会議第4代会長に就任。(出典

声明文発表

フォーラムは、第25回公開憲法フォーラムの声明が発表された。声明文の朗読は、憲法をよくする学生プロジェクトのメンバーの上智大学3年生 高橋乃愛さんが行いました。

第二十五回公開憲法フォーラム声明文

国難迫る―急げ、憲法に国防条項・緊急事態条項の明記を!

 今や我が国は、戦後かつてない厳しい安全保障環境に置かれている。我が国を取り巻く国々のうち、中国は尖閣諸島に対して武装公船による領海侵犯を常態化させ、ここ数年以内に確実視されている「台湾有事」の際には、中国軍による沖縄や南西諸島の米軍基地、自衛隊基地への武力攻撃さえ懸念される。ロシアは国際社会からの強い非難をよそにウクライナへの侵略を続け、核使用の威嚇すらしている。また中露両国は、我が国近海において共同軍事演習を繰り返し、我が国への軍事的威迫を強めている。さらに北朝鮮は、長距離弾道ミサイルの発射を繰り返し、核武装政策を突き進めている。

 こうした極めて深刻な安全保障環境を踏まえ、岸田内閣が昨年十二月に閣議決定した安保三文書は、「一部の国家が、軍事的・非軍事的な力を通じて、自国の勢力を拡大し、一方的な現状変更を試み、国際秩序に挑戦する動きを加速させている」と明記するに至った。国民もまた、本年三月に発表された内閣府「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」によれば、「日本が戦争を仕掛けられたり、戦争に巻込まれたりする危険がある」が八六・二%と、平和幻想から脱却しつつある。

 国内に目を転じれば、本年は、関東大震災百年という節目の年である。今後三十年以内に七十%以上とされる首都直下型大地震や南海トラフ巨大地震の発生確率の高さを踏まえるならば、我が国はいつ大規模自然災害に直面しても不思議ではない。さらに三年間に及んだ新型コロナウィルス感染症の大流行は、今後とも、常に我が国が感染症リスクに備える必要があることを示している。

 まさに我が国には内外共に未曽有の国難が迫っている。ところが現行憲法は、我が国に対する武力攻撃や大規模自然災害等の緊急事態を全く想定しておらず、様々な法制度の不備・欠陥を抱えたまま今日に至っている。

 幸い国会の憲法審査会では、定例開催が定着化するとともに、緊急事態における「国会議員の任期延長」等、改憲に向けた一定の合意形成が図られつつある。

 しかしながら、我が国の防衛体制及び危機管理体制を抜本的に是正するためには、さらに踏み込んだ本格的な改憲論議が不可欠である。残された時間は少ない。各党におかれては、大同団結のもと速やかに合意形成を図り、一刻も早く国防条項及び緊急事態条項を明記のための憲法改正を実現するべく、鋭意努力されるよう強く要望する。

令和五年五月三日

「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会(通称 民間憲法臨調)
美しい日本の憲法をつくる国民の会
声明文を読み上げる 智大学3年生 高橋乃愛さん
来場者よりひときわ大きな賛同の拍手が起きた.

声明文手交

第25回公開憲法フォーラム声明文は、櫻井よしこ 主催両団体代表から柴山昌彦 自民党憲法改正実現実現副本部長に、西修 民間憲法臨調副代表から濱地 公明党憲法調査会事務局長に、百地章 美しい日本の憲法をつくる国民の会幹事長より音喜多日本維新の会政務調査会長に、浅野良治東京国際大学学長より玉木国民民主党代表に手交されました。

声明文は主催団体役員から各党代表に手交された

閉会の挨拶

第25回公開憲法フォーラムの閉会の挨拶は、美しい日本の憲法をつくる国民の会幹事長の百地章国士舘大学客員教授が行いました。

美しい日本の憲法をつくる国民の会幹事長 百地 章 氏

憲法改正の実現に向けて一層の奮起を

憲法フォーラムに参加してくださった皆様に感謝し、「国難迫る 急げ、憲法に国防条項緊急事態条項の明記を」の統一テーマのもと、諸先生方、そして国会議員の先生方に感謝を述べた。そして、現在、与党間で緊急事態下の国会議員任期延長に関して合意がほぼ得られており、早期の条文案のまとめと憲法改正の発議を願った。また、朝日新聞の世論調査では、緊急事態条項と緊急政令に対して賛成の意見が多くなっており、国防条項に関しても審議が進んでおり、自衛隊の憲法明記についても合意が進んでいる述べた。国際条約の枠組みを活用し、自衛隊の憲法明記と9条2項の改正に向けて建設的な議論を望み、国際条約の枠組みを活用し、自衛隊の憲法明記と9条2項の改正に向けて建設的な議論を展開して欲しいと訴えた。そして、最後に、国民投票運動に勝利し、憲法改正の実現に向けて一層の奮起を訴えた。

百地章(ももち あきら)氏 プロフィール

百地章(ももち あきら)氏 プロフィール

日本の法学者で、憲法学が専門。京都大学で法学博士号取得、日本大学名誉教授、国士舘大学特任教授を務める。比較憲法学会の元理事長、憲法学会理事、「民間憲法臨調」事務局長、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」幹事長。産経新聞「正論」の執筆メンバー。

公開憲法フォーラムに参加して

今回の憲法フォーラムは「国難迫る 急げ、憲法に国防条項、緊急事態条項の明記を!」をテーマに、各団体代表者や政党の代表者が提言を行いました。どの提言も緊急事態における国防条項が必要であるとし、早期の創設が最重要課題であると訴えていました。これは、ウクライナ情勢を目の当たりにし、世界の平和がいかに脆いものであるか思い知らされ、中国の力を背景とした一方的な現状変更により台湾有事勃発を懸念している多くの国民には受けいられる内容であると私は感じました。

振り返ると、平成29年(2017年)の公開憲法フォーラムで故安倍晋三元自民党総裁は、「憲法9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」とメッセージを発信しました。それに対し、多くのメディアは「9条2項を死文化させ、自衛隊の任務や装備を拡大・強化し、再び戦争ができる国に転換しようとしている」と批判しました。

また、緊急事態条項の創設についても、1919年に制定されて当時最も民主的だと言われたドイツのワイマール憲法が「大統領緊急令」を濫用されてヒトラー独裁体制が出来た事を挙げ、非常に危険であると多くの憲法学者が激しく批判しました。

そして、6年が経ちました。この間、新型コロナウイルスの蔓延により、現行憲法の課題が明らかになり、改憲の機運が高まっています。

今、安倍氏の思いは実を結び、具体的な緊急事態条項の創設について憲法審査会で議論されています。国難が迫る中、来年の公開憲法フォーラムが開催される時には憲法改正の発議の道筋がついていて欲しいと、私はこのフォーラムに参加して思いを強くしました。(桃原 裕輝)

近年の改憲の機運上昇は、この日から始まりました。

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閉会となり会場を後にする人々。
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