第25回公開憲法フォーラム レポート

冨士社会教育センター理事長 逢見直人氏

続いて、45年間に渡り労働組合の活動を一筋に行い、連合の会長代行を務めた逢見直人氏が登壇しました。逢見氏は、昨年に続き、2回目の出演です。

緊急事態条項を憲法に導入を

憲法審査会が2年前までは実質的な開催しかできていなかったが、国会で憲法論議をもっと活発に行うべしと言う国民の声が反映され、昨年からは毎週一回定例日として憲法審査会が開催されるようになった点について評価。

これは、ここ数年で大規模自然災害感染症の世界的拡大、東アジアにおける日本を取り巻く安全保障環境の深刻な懸念など、危機管理上の大きな危機に関してこれまで76年間一度も改正されてこなかった現行憲法で本当に大丈夫なのか欠陥はないの多くの国民が関心を持っているとし、外部からの武力攻撃組織的なテロ重大なサイバー攻撃経済的な大恐慌大規模な自然災害深刻な感染症など、平時の統治体制ではできないような国家の非常時にあって、国家がその存立と国民の生命安全を守るために国防条項、すなわち緊急事態条項を憲法に導入すべきと訴えた。

去る3月30日、日本維新の会国民民主党有志の会の3党派で、日本国憲法への緊急事態条項の創設に向けた合意文書(POINT 参照)が確認された点については、野党から建設的提言が出されたことは歓迎すべきものと述べた。混沌たる国際情勢の中で憲法を見直し、時代に合わせて改正していく必要性が迫っていると訴えた。

緊急事態条項の創設に関する 3党派合意書

日本維新の会、国民民主党、有志の会は、いかなる事態においても国会機能を維持し、権力を統制・分立することが重要であることに鑑み、日本国憲法への緊急事態条項の創設に向けて、以下のとおり確認した。

1. 緊急事態における議員任期延長については、実体要件、その認定手続、効果等を定めた3党派合意の条文案に基づき、憲法審査会において他党派との速やかな合意形成に努める。

2. 憲法裁判所の関与の必要性のほか、議員任期延長以外の国会機能維持のための措置や、絶対に制限してはならない人権に係る規定等の条文案については、今国会中に成案を得ることを目指す。

3. 国会機能が維持できない場合に備えた緊急政令及び緊急財政処分に係る規定についても、論点を整理し、条文案の作成に向けて、引き続き、検討を進める。

連合とは?

「連合」の正式名は「日本労働組合総連合」。1949年に設立され、現在は約1,000の労働組合が加盟、組合員数が683万7千人、地方直加盟を含めた総数では695万2千人(ソース)の日本最大の労働組合の全国中央組織で、立憲民主党や国民民主党の最大の支援組織です。一方、自民党は最近、連合との距離を縮める動きを活発化させています。これは、労働組合の中央組織である連合が重視する雇用政策や賃上げなどに重点的に取り組む為だと考えられています。
逢見 直人(おうみ なおと)氏プロフィール

日本労働組合総連合会(連合)副事務局長(政策局長)、UIゼンセン同盟副会長、全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟(UAゼンセン)会長、連合副会長を経て、現在は富士社会教育センター理事長、日本労働組合総連合会顧問を務める。

日本経団連専務理事 井上 隆氏

続いては、経団連専務理事の井上隆氏より提言がありました。日本経済団体連合会(略称:経団連)は、日本の代表的な企業1,494社、製造業やサービス業等の主要な業種別全国団体108団体、地方別経済団体47団体などから構成される日本の経済界の代表的な組織として、政府や社会に経済政策や産業振興に対する提言や助言を行っています。

有事への包括的な備え、国家の危機管理について真剣な議論を

続いては、経団連専務理事の井上隆氏より提言がありました。日本経済団体連合会(略称:経団連)は、日本の代表的な企業1,494社、製造業やサービス業等の主要な業種別全国団体108団体、地方別経済団体47団体などから構成される日本の経済界の代表的な組織として、政府や社会に経済政策や産業振興に対する提言や助言を行っています。

井上氏は、憲法は決して不磨の大典となってはならないとし、時代の流れや日本を取り巻く情勢意識の変化などに即して不断の改善を行い、次の世代に引き継いでいかなければならないとし、経団連の最近取り組みを紹介した。

1つ目は国家安全保障について、我が国を取り巻く安全保障環境は年々、複雑かつ厳しいと以下の点を指摘。
・先行きは全く見えないまま多くの尊い命が失われ続けているロシアによるウクライナ侵略
・北朝鮮の核開発ならびに重なるミサイルの発射
・軍事力を急速に拡大して、海洋進出や威嚇行為を活発化させている中国

これに対し経団連では、ウクライナ侵略を我がことと捉えて、日米安保体制を基軸に防衛力を抜本的に強化すべきということを提言を岸田総理に手交。そして、政府により昨年12月に国家安全保障戦略などにおいて、防衛力の抜本的な強化に向けた具体的な方針が示されたと述べた。

2つ目は新型コロナウィルスの危機対応に対して、マスクを初めとする必要物資の備蓄が不十分であったこと、有事の医療提供体制が十分に機能せず、国と地方の関係があいまいであり産学官の連携が不十分だったと指摘。

経団連はコロナ対策では政府に全面的に協力をしテレワークの推進、ワクチンの職域接種等々を進め、昨年11月に政府の司令塔機能の強化と次なる感染症に備えた体制整備を求める提言を公表したと述べた。また、感染症の発生時に司令塔機能を担う内閣感染症危機管理統括庁の創設を盛り込んだ改正法が成立をし、本年秋ごろには発足する予定であると述べた。

この2つに加えて、さらに我が国が地震噴火、台風などの自然災害大国であるという点も有事対応に欠かせないと訴え、日本ほど多様な種類の有事対応緊急事態対応国民の安心安全確保を想定をしておかなければならないという国は世界でも少ないのではないかと述べ、個別の危機ごとにそれぞれの法律を準備するのではなく、我々自身の生命と財産を守るための基本的な規範として、憲法において緊急事態条項や国防条項を求めることを検討する必要があると訴え、有事への包括的な備え、国家の危機管理のあり方につきまして、国民全体の真剣な議論を喚起をしていくことが重要だと訴えた。

井上 隆 氏 プロフィール

一般社団法人日本経済団体連合会の専務理事。1982年に早稲田大学商学部を卒業し、精密機器メーカーに勤務。フランス駐在などを経て、1995年に経済団体連合会事務局に入局。
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